本当の自分と「刷り込み」

整体を受けに来られる方や教室に参加される方で、何らかの心のワーク、心理的なセラピーやセミナー、あるいはスピリチュアル系のセミナーやヒーリングを受けたことがあるという人が、ここ数年の間に増えている傾向があります。

ここ数年の間で急激に、それらを比較的簡単に、たくさん受けられるような世の中になってきましたから、それも当然なのかもしれません。

 

それで、そういった方々に、私は意地悪な質問をすることがあります。
「心のワークを受けて、自分が大きく変わったと思われますか?」と。

中には「あまり変化がわからない」という人もいれば、逆に「生まれ変わりました」みたいなことをいう人もいます。

「本当の自分を見つけることができた」とか、「自分が親に洗脳されていたことに気づいた」「親や学校教育による『刷り込み』が取れた」「人生が変わった」「価値観が180度変わった」・・・などという大きな変化を感じているという人もいます。

 

しかし・・・また意地悪なようですが、
「それにしては、体がよくないですね、何か余分な緊張を抱えているようです」
というようなことを言う場合があります。

もちろん、実際に体を見て、不自然な硬直・緊張が感じられるからです。
それもそのはず、体に不調を感じているために整体を受けに来ているのですから。
でも、その私の言葉の真の意味を感じてもらえることは、そう多くないようです。
当たり前のように、
「えぇ、昔から肩が凝りやすいんですよ〜」とか、
「昔から力が入りやすい癖があるみたいで」・・・
といった言葉が返ってくることが多いです。

「なるほど、じゃぁ、昔とあんまり変わってないってことですね」
というような言い方をすると、だんだん先ほどの言葉の本意に気づき始めて頂けるようです。

 

『体と心は一つ』という言葉は、もう使い古され、言い尽くされ、その本当の意味とは別に、形骸化されてしまった力のない言葉になってしまっているような気がします。

体と心が一つであるということは、心が大きく変われば、当然体も大きく変わるということです。
価値観が180度変わるほどの変化は、必ず体にも大きな変化をもたらします。

これは理屈ではなく、本当に見た目まで変わっていきます。
複雑な矯正テクニックを使っても変わらないような筋肉の緊張や背骨や骨盤の状態まで、劇的に変化させてしまうんです。

逆に言えば、体が変わらないような変化は、本当の変化じゃないということです。

中には「○○セラピーのおかげで、心のことはもう大丈夫、今度は体のことを…」という人もいるのですが、本来体と心は同時進行なんです。
同時進行といっても、二つのことが同時に進むということではなく、元々一つ、一体なんです。

ちなみに、精神世界と現実世界も一つのはずです。
「どちらもバランスよく」ということではなくて、元々一体。

 
様々なヒーリング、セラピー、ワークショップを受けられるような現在の世の中は、一方ではとても便利です。
今まで気づけなかったことに気づくチャンスが、多くの人に与えられたという点では、大きなメリットだと思います。
しかし一方では、「本当の自分に・・・」「親や学校の刷り込みが・・・」といった、新しい刷り込みで自分を覆っているだけの人も多くなっているような気がするんです。

「親が『毒親』だから」とか、「今までの価値観は全部洗脳だった」とか、そういう新しい考え方が今の世の中には溢れています。

新しい仮面を身に纏い、本当の自分に出会ったかのような勘違い・・・

実際は、逆に今までよりも一皮余分に被ってしまい、余計に本質が見えづらくなっている、そんな複雑な人が増えているというのが、正直な感想です。

心というのはいくらでも、自分を誤魔化すことができてしまいます。
もちろん深層心理で、という意味での「心」ですが、誤魔化していることにさえ気づくことができない場合がほとんどです。
しかしその心の本当の姿を、体は目に見える形で表してくれています。

とは言っても観察眼を磨かないとそれは見えてきませんが、整体というのは、その心が刻み込まれたものとして体を見ているのです。

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