「体が固い」という人のほとんどは、まず背骨が硬くなっている、ということがいえます。
背骨が固いというのは、実際は骨そのものの固さの問題ではなくて、背骨を支えている筋肉が固くなっているのです。
では、なぜこの背中の筋肉が固くなってしまうのでしょう?
よく考えられる原因としては、普段からあまり体を動かさないから、運動不足だから、というものがあります。
確かにそれもあるでしょう。
でもそれだけが原因だとしたら、ある程度の時間をかけてストレッチをしていけば、それなりに柔らかくはなっていくものです。
実際に、そうなっていく人もいます。
しかし、単なる運動不足よりももっと大きな原因があります。
それは、「神経がいつも緊張している」というものです。
ここでいう「神経」というのは、「精神」という意味も含めたものとして考えて下さい。
「背骨を支える」ということは、背すじを起こす、体を起こす、ということです。
これはつまり緊張姿勢です。
背筋をピンと張ってリラックスすることはとても難しいのです。
神経の緊張が限りなく抜けた状態で、背筋をピンと伸ばしていることは無理なのです。
神経の力が抜けた極限の状態が眠っている時です。
立ったまま眠る事はできません。
眠ってしまうほど神経の力が抜けた状態では、背骨を起こして支えるだけの筋肉の力を入れることができないのです。
それほど背骨を支える筋肉というのは、神経(精神・意識)に強く左右されているのです。
急に神経が緊張するとき・・・例えば突然耳元で大声を出された時とか、突然目の前にボールが飛んで来たときなどには、体が固まって動けなくなってしまうでしょう。
そういう時は背骨の脇の筋肉が固まっているのです。
もちろん手足も固まってはいますが、最も緊張するのは背中の筋肉です。
そしてその多くの場合、瞬間的にビクン!とのけぞるような姿勢を取る人もいます。
これは緊張とともに背骨が急に起きるからです。
そしてその後は、背中がゾクゾクして寒気がしてくるでしょう。
やがて背中や頭から冷や汗が出てくるはずです。
これらは急激に緊張した頭(脳)と背骨をゆるめようとする反応と考えられます。
体がブルブル震え出すのも同じです。
これらは極端な緊張の例ですが、ともかく背骨の筋肉がいつも固くなっている人というのは、神経の緊張が強い人に多いのです。
だから柔軟体操をしようとしてもなかなか柔らかくなりません。
むしろそういう人は、「しっかり柔らかくしなければならない」と焦りすぎる傾向が強いのです。
または、「うまく出来なくて恥ずかしい」という思いで余計に力んでしまう、ということもあります。
ヨガ教室や体操の教室に参加しても、講師や周りの人の目が気になってしまう自意識過剰な人にも多いです。
先ほど、眠っている時には神経の力が抜けている、と書きましたが、実は完全に抜けているわけではないのです。
眠っていながらも、まだ神経の力が抜けきれていない人も多くいます。
不眠症の人などはその究極の状態ですし、ストレスの多い人、考え事ばかりしているような人で、眠りの浅い人がそうです。
また、深夜に面白い本や映画を見て興奮してしまい、なかなか寝付けないというのも、その神経の興奮が背骨を緊張させてしまい、体が全然休む体勢に入らないからです。
でも本当は、背骨が固くなるメカニズムはこうです。
神経が緊張すると、脳の緊張が最初に起こります。
そうすると、頭が重たくなるのです。
その結果、その頭を支える背骨の強度を増さなければならなくなります。
そのために背骨の脇の筋肉がより力を入れて、緊張が起こるわけです。
ともかく、このように常に頭を緊張させている人は、その影響で背中が固くなってしまうのです。
ですからそれを弛めるためには、本当は頭、そして感情を司る腹部をゆるめること等が必要になってきます。
当塾が頭部、腹部の整体操法を特に重要視しているのはそのためでもあります。