昔は妊婦さんが壁をかじっていたり、雑草や土を食べたくなった、なんていう話がよくありました。
昔の土でできていた壁なんていうのは、ミネラル分が豊富だったのでしょう。
そこまで極端ではなくても、普段はぜったい食べないようなものをどうしても食べたくなったとか、どうしてもあるものを食べたくなって我慢できず、飛行機で実家へ帰ってしまった、という話も聞いたことがあります。
逆に何も食べたくなくて断食をした人もいれば、妊娠前よりも食欲が減ったなんていう人もいます。
それくらい、妊婦さんの体というのは「本能的」に、自分の体が求めているものを欲しくなる感覚が強いのです。
だからとにかく、食べたくもないものを無理矢理食べさせたり、逆に食べたくて仕方の無いものを我慢させたり、ということはおかしいのです。
これは本当は、産前産後に限ったことではありません。
コップ一杯でレモン10個分のビタミンCが含まれた飲料とか、野菜1kg分の食物繊維が含まれた錠剤とか・・・
一度にレモン10個を食べられる人なんていないし、野菜1Kgを一度に食べる人もいないでしょう。
しかもそのレモン10個分、野菜1kg分に加えて、普通の食事まで摂っているという、冷静に考えればムチャクチャな食生活を、なんだかんだと理由をつけて続けている人、勧めている人が大勢いるのです。
そもそも理由なんていうものは何にでもつけられます。
「放射能が体にいい」という論を唱える人もいるし、「タバコで呼吸器が丈夫になる」という論を唱える人もいます。
「頭は洗わないほうが清潔になる」という人もいれば、「睡眠は一日3時間でいい」という人もいます。
それぞれを正当化するような理由・理屈なんていうものは、いくらでも組み立てることができるものです。
しかし、どんな理屈を並べたところで、体はその結果を正直に表してしまいます。
だから整体では、体を見るんです。
その人がどんな理屈を言おうと、どんな言い訳をしようと、体はごまかせません。
問題は、その正直な体の声さえも、自分自身で聞けなくなっている人が多いということです。
体はボロボロになって悲鳴をあげているのに、まだ訳の判らぬ理屈のほうが正しいと思っている人が多いのです。
それほどに、頭というのは頑固で、盲目的です。
しかもその理屈・知識を数多く持っている人のほうが「立派だ」と勘違いしてしまいます。
そうして、自分の体そのものの声は聞こえなくなってしまう。
他人の体だともっと聞こえない、見えない。
だから、おかしなことばかり押し付ける健康指導者が後を絶たないわけです。
ともかくこういう「頭の暴走」による害は非常に多いです。
いろんな情報に翻弄されるよりも、自分自身の体の声に忠実になること、そして「敏感な体をつくる」ということを目標にして頂きたいと思います。