「整体」とは、背骨や骨盤の「歪み」を整えるものだと認識されている方も多いことでしょう。
実際、整体院などに行って「背骨が歪んでいる」と言われた人、「骨盤の歪みがひどい」と言われた人、「猫背を治せば肩こりが治る」と言われた人などが、当塾にもよく来られます。
そうした歪みというのは大抵、足の長さの違いや肩の高さの違い、顔の向きの違い等によって判断されているようです。
ならば、短いほうの足を引っぱっておけば整うのか?というと、決してそうではありません。
肩の高さや顔の向きが偏っているから、逆の方向に捻っておけば整う、というようなものでもありません。
こうした体の「歪み」というのは、多くの場合、とても複雑なプロセスを経て起こっているものなんです。
仮に、背骨のある部分が右に傾いてしまったとしましょう。
実際には一つの背骨だけが歪む、ということは滅多にないのですが、説明のためにそういう設定で話を進めます。
その背骨が右に傾いたままでは、何かと不便です。
ですから、隣の背骨もそれに合わせて位置を変え、バランスを取るようにします。
そうするとさらにその隣の背骨も、それに伴って位置を変えてつじつまを合わせます。
そういうことがさらに隣へ、また隣へ・・・と波及していって、背骨全体の大きな歪みが作られていくわけです。
ですから、たとえば骨盤の高さが違うからといって、その矯正をしたとしても、その歪みの背景にどのような歴史があるか、これを読みとって対処していかなければならないのです。
足を一生懸命引っぱっても、腰を捻って背骨を矯正しても、こうした背景を無視して整えることはできません。
このように背骨は隣同士で「つじつま合わせ」を行っているわけですが、その背骨の一番端である骨盤の所にくると、もうつじつま合わせをしてくれる背骨が隣にありません。
だからこうした歪みの「行き止まり」になる場所が腰なのです。
骨盤もそのつじつま合わせのために歪みますが、背骨に比べ、大きな骨盤を歪ませる力というのは相当強いものです。
骨盤が歪む頃には、もうその場所にかなりの圧力が蓄積されていることになります。
腰痛の多くは、こういう状態の時に起こります。
だから単純に「骨盤が歪んだ」「腰が歪んだ」という問題ではないんです。
もっとその背後に、背骨のもっと上のほうから伝わってきた歪みの連鎖があってのことなんです。
ですから、歪んだ腰の椎間板を削ったり、固定して動かないようにしたところで、根本的に問題は解決しません。
そればかりか、歪みの圧力は行き場を失って、今度は逆流を始めたり、腰を飛び越えて脚のほうにつじつま合わせ求めて波及していくことになりますから危険です。
膝の症状などは、ほとんどがこういうプロセスを経ています。
また、この連鎖は腰に向かうばかりではなく、上の方にも当然向かっていきます。
まず引っかかりやすいのが、肩甲骨の間。
大きな骨に挟まれているこの場所は「第一関門」です。
第二関門が、肩甲骨の上端で、背骨の形状が変わる首と肩の境目。
首や肩のコリ・痛みは、歪みがここを通るときに発生します。
そして第三関門が首と頭の境目。
ここから頭痛が始まり、さらに進行すると頭の中に様々な問題が発症してしまうことになります。
このように、体の中には様々な連鎖があります。
背骨だけではなく、様々な場所で互いにバランスを取り合い、そしてそれぞれが心とも影響しあって、一人の人間の身体が出来上がっているということですね。