もうしばらくすると、暑い季節がやってきます。
熱中症の予防のために、的確な水分補給とともに大切だとされているのが、塩分の補給です。
汗をかくということは、体の中から水分と塩分が抜けていくということですから、たとえ水をしっかり飲んでいても、塩分が不足していれば、飲んだ水分も的確に体に吸収されていきません。
ただ、水も塩も、いったいどの程度とればいいのかという話になると、それには諸説あるようですし、一概に言えません。
そもそも、人によって、そして時と場合によって汗をかく量も違うわけですから、それを数字で表すことなどできないのです。
しかしながら、私達の体は、その必要な量を『欲求』という形で表してくれているのです。
だからその体の声を正しく聞くことを一番に心がけるべきなのではないでしょうか。
体が水を必要とすれば、当然喉が渇きます。
そうしたら水を飲めばよいのです。
その時に飲む水は、とても美味しいはずです。
その美味しさを充分に味わって飲めばいいのです。
急ぎすぎると、その味わいがよくわかりません。
じっくりと味わいながら飲めばいいのです。
渇きが癒されれば、もう水を飲みたくなくなります。
それ以上飲めば、すぐに『水腹』になる感覚があるでしょう。
ただ夏の暑い時期は誰でも、つい勢いで飲んでしまう傾向がありますから、多少水腹になるのも仕方ありませんが、だけどやはりそれは飲み過ぎなんですね。
よく水腹になる人は、普段から注意して、もう少しゆっくり、落ち着いて水を飲むようにしたほうがいいでしょう。
健康法として、毎日決まった量の水を飲む、毎日決まった時間に水を飲む…なんていう人もいますが、時間や量で計って飲んでいたのでは、全く体の声など聞くことができません。
やはり「飲みたい」という欲求があってこそ、そして「美味しい」という喜びがあってこそ、必要な水は体に心地よく吸収されるのです。
塩分についても、同じことが言えます。
体が塩分を必要とすれば、塩気のあるものが食べたくなります。
そうしたら食べればいいのです。
当然好き嫌いはありますが、キュウリの漬物とか、梅干しとか、ラッキョウ漬けとか、そういうものが食べたくなるし、思い浮かべただけでヨダレが出てきます。
普通は「しょっぱい」と感じるそれらも、大量の汗をかいた後などは、甘くさえ感じられるはずです。
そして、一気に体の力がよみがえってくるかのような爽快感を感じることでしょう。
しかし、食べ続けているうちに、だんだんしょっぱく感じられてきて、もういらなくなります。
それはもう、体に必要な塩分を吸収し終えた合図ですから、それ以上食べても体に負担をかけるばかりです。
このように、体はちゃんと、必要な水分や塩分の量を、『渇き』や『味覚』といった感覚を通して知らせてくれているのです。
この『感覚を通して』ということがとても大事なところです。
こうした感覚は、何度も経験を重ね続けることで維持され、そして育っていきます。
だから、渇きの経験も、食欲の経験も、そして美味しいという経験も、満足感の経験も、私達が自分の体や心を守っていくために、とても大事なことなのです。
これは、水や塩分に限った話ではありません。
あらゆる食事について言えることです。
体が必要としている栄養分は本来、食欲としてちゃんと感じられるようになっているのです。
だから、食べたい時、食べたい物、食べたい量というのは、その感覚に従うのが本当は正しいのです。
その感覚は、体が必要なものを食べ、「美味しかった」「満足した」という経験が豊富な人ほど正常に働いています。
ともかく、その経験が豊富な人ほど、食事に対する喜び、食物に対する感謝の念、作ってくれた人への感謝の念も強いはずです。
いくら「感謝しなさい」「食べる前に手を合わせなさい」と教えられても、本当の感謝というのは、感動を伴わない限りは湧いてこないものです。
※補足
子供の頃からジャンクフードやスナック菓子、インスタント食品等ばかりを食べて育った人は、なかなか自分の体に必要なものがわからなくなっている傾向が強いです。やはりそれは、野菜、魚、肉などをきちんと料理したものを食べて育つ、ということが前提になります。