難しい問題が発生した時とか、つらい出来事があった時、失敗してしまった時、悔しい思いをした時・・・
そんな時に、最も処理に困るのが、「苦しい」「悲しい」「悔しい」「羨ましい」・・・などといった、自分自身の「感情」ですよね。
これらの感情は、よく「マイナスの波動を持つ感情」などと言われたりしています。
そして、自己啓発の本などを読むと、こういうマイナスの波動を持つ感情が、マイナスの出来事を「引き寄せる」などとも言われています。
もしこれが本当だとすると、私達はどんな時でも、特に苦しい時ほど尚更、これらの感情を持たないように努めなければならない、ということになりますよね。
でもそれって、つらいですよね。
難しいですよね・・・というよりも、そんなこと出来る人、いるんですかね?
私は疑問に思うんです。
悲しさ、苦しさ、そういった感情がわき起こるのも、心の中の「自然現象」だと思うんです。
だとしたら、それを無くしてしまうということは、たとえば、悪い物を食べてしまった時の下痢や嘔吐を止めてしまうことと同じではないか、と。
せっかく体が反応して、悪い物を外に出そうとしているのに。
悲しむことや苦しむこと、悩むこと、迷うことを、「自分の弱さ」だと考える人もいます。
「弱いから悩むんだ、弱いから悲しむんだ」と。
だからそういう人は、悲しんだり迷ったりすることを「悪い事」だと考える。
そして自分の感情を押し殺し、自分の気持ちそのものを押し殺し、「正しいこと」だけをやろうとする、「正解」だけを選択しようとする。
そうしているうちに、自分の気持ちとか、自分の希望とか、好きな物、嫌いなもの、嬉しいこと、苦手な事・・・そんな純粋な自分の本当の「心の動き」というものがわからなくなってしまっています。
それでも時々ふと、「嫌だなぁ」とか「本当は断りたいな」とか思うことはあるんです。
でもやっぱり感情を押し殺す癖がついているから、その自分の「本当の思い」を形にすることが恐くて仕方がない、その責任を負う自信もない。
だからやっぱり、そんな自分の声はなかったことにして、周りの人が皆「正しい」と言ってくれるような答えを選択してしまうのです。
そうすることで、その時には大きな安心感が得られます。
だけど、ふとわき起こり、そして押し殺した感情というのは、いつの間にか自分自身の内側に堆積していきます。
それがある程度の量に達した時に、心や体のバランスを崩し始めます。
もちろん、社会の中で生活していれば、感情を押し殺さなければならないことも多々あるでしょう。
だけど、いつも自分から感情を押し殺しすぎているような人は、やはり意識して、時々本当の自分と向き合ってあげなければいけないと思うのです。
そしてその「本当の心」というものを、時々陽に当ててあげなければいけないと思うのです。
たまには「正しい」ことじゃなくても、周りの人に反対される恐れがあっても、自分のやりたいことをやってみる、自分の嫌なことを避けてみる。
そして、ムカムカしてみたり、メソメソしてみたり、そんな自分の気持ちに素直になってみる。
慣れない人にとっては、これはとても勇気のいることでしょう。
恐かったり、情けなかったりするかもしれません。
だけどこの「恐さ」が自分の中に勇気を育て、「情けなさ」が自分の中に慈愛を育てるのではないでしょうか?
つらい出来事や悲しい経験は、人間を一回り大きくする、なんていうことが言われていますが、それはその出来事を無理に「前向きに捉えよう」ということではないと思うんです。
そのつらさ、悲しさを、しっかり「味わう」事で、その経験に含まれている「栄養」をしっかり吸収することができるんだと思うんです。
だから、その出来事で悲しんだり、苦しんだり、情けなくなったり、恐くなったり・・・そういう感情の動きが伴わないと、吸収することなど出来ないはずです。
簡単に前向きに捉えられる程度の出来事に、どんな栄養があるというのでしょう?
一方で、世に中には、すぐに感情的になって当たり散らしたり、泣きわめいたりする人もいますよね。
でもこういう人は、決して自分の感情に素直なわけじゃないんです。
実は感情を自分の中で受け止めずに、すぐに他者にぶつけているだけなんです。
よく噛み砕いて、味わおうとしない。
口に入れた瞬間に少しでも苦みを感じたら、すぐに吐き出してしまう人です。
だから全く消化しないし、吸収しない、どんなに経験を積んでも、全く大きくならないんです。
食べ物だって、口当たりは苦いけれど、深い味わいをもっているものがありますよね。
そういうものは、よく噛んで味わってみないとわからないし、噛めば噛むほど味わいが増えてくる。
そしてよく噛んでいるうちに、その味もなくなってきて、その頃には溶けて口の中から消えています。
そして体に吸収され、血となり肉となる。
私達の身の回りに起こる様々な出来事も、同じようなものではないでしょうか?
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