気を出す(?)

体と心の話

以前、初めて当塾に来られた方に、来訪されたきっかけを伺ったんですが、ある治療院で、私のことが噂になっていたというのです。

で、その噂を聞いて、気になって来てみた、と。

 

どんな噂なのかを尋ねてみると、「すごい『気』を出して体を治す人がいる」ということだそうです(笑)

その治療院とは面識はおろか、何のつながりも思い当たりません。

 

おそらくそこの関係者の方がホームページをご覧になったか、過去に当塾に来られたことがあるのか何かなのでしょう。

そしてだんだん、噂に尾ひれがついて、違う話に変わっていってしまったのでしょう。

で、私は別に「すごい気を出して体を見ている」わけではないので、「そんな怪しいもの、出してませんよ(笑)」と答えておきました。

(ちなみにその方本人は、ホームページもよくご覧になって、その噂は勘違いだろうと理解した上でお越しいただいたようですが。)

 

 

確かに当塾では、整体法の「愉気」というものを大事にしていますし、「『気』でつながる心理テクニック」なんていう、一見すると怪しい講話CDも販売しています。

だけど、何かのエネルギーのような「気」を出しているわけでもなく、「気で治している」わけでもないんです。

 

愉気というのは、通称「野口整体」と呼ばれる整体での考え方ですが、この愉気を、「手を当てて病気を治すこと」と解釈するならば、それは間違いだと私は思うんです。

野口整体的に間違いか正しいかということではなく、あくまでも、自然体健康塾的に言わせてもらいます。

 

たとえば、カリスマ気功師とか、ヒーラーの方とかが、手を当てるだけで難病・奇病を治した・・・というものとは、全く別ものと考えて欲しいのです。

そういう現象を否定するつもりは全くありませんし、私もそういう「奇跡」を目の当たりにした経験もあります。

でも、そういうものを期待して当塾に来られても、大きく期待を裏切られることになりますから、注意してください。

それに、そういうことが良いことだとも、思っていないんです。

 

では「愉気」というのが何かというと、言葉での表現には限界があるんですが、それは、お母さんが赤ちゃんを無条件に抱っこしてあげたり、子供の頭をなでてあげたり、手をつないであげたり、膝枕をしてあげたり・・・

そういうものに近いんじゃないかと思うんです。

「してあげる」というのも、本来は違いますね。

思わず、自然にそうしている状態。

 

だけど、そんな当たり前のことが、子供のアトピーとか、喘息とか、原因不明の病気とか、そういうものの解決に何の約に立つんだ!?と思う方も多いでしょう。

ましてや大人の体にとって、何の影響力があるんだ!?、と。

 

だけど本当は、大人だって、そういうものを本質的には求めているものなんです。

自覚はほとんどないでしょうけど・・・

究極の時には、やはり薬よりも栄養よりも、人の手を求めるものなんです。

 

近年、若い人たちや子供の体がどんどん弱くなっている、と言われています。

実際には若い人ばかりではありませんが、確かに根本的に弱い人が本当に多いです。

体操を教えても、整体の技術を施しても、私が昔習ったことが全然通用しないことが本当に多いです。

基礎的な体力がない…というより、ハッキリいって、本来あるべき姿に体が育っていないんですね。

骨格とか、内蔵とか、筋肉とか。

子供のうちに本来育っているべき能力や機能が、充分育ちきらないまま年齢を過ぎている人も多いようです。

こんなに食べ物も生活環境も、そして医療・教育・福祉関係の環境も充実している現代においても、です。

 

その原因を一言で言うと、「体の要求を満たしていない」ということだと私は思います。

本来、体が育っていく上で、体そのものが求めている要求を、読めていないということです。

食べ物も、睡眠も、運動も、体の要求が無視されているからです。

体の要求よりも、医学書、育児書に書かれている平均的な数値とか、カリスマ先生が説いている「正しい方法」とか、そういったものが優先されているからです。

 

麻疹や水疱瘡、耳下腺炎といった、子供が必ず通過する病気さえも、「要求」です。

風邪だって、排泄と成長のための「要求」ということができます。

それさえも、全うすることなく途中で止められてしまう現代のあり方が、未発達の体を作る大きな要因であると言えるでしょう。

 

そして、子供の心理的な要求には全て、体に直結した意味があることを忘れてはなりません。

そうした「要求」が分からないのも、元をたどれば「体で感じるコミュニケーション」、「感覚で感じる」といってもいいでしょう、そういう能力が欠けているからだと思うんです。

本来、「ふと感じる」べきものが、分からなくなっている人が多いんです。

ひどい人だと、自分がお腹が空いているのかどうかも分からない、眠いかどうかも分からない、痛いかどうかも分からない。

「体感覚」が鈍っているんです。

 

体感覚というのは、満たされてこそ育つものです。

お腹が空いて、食べて、満たされる。

その喜びと共に、味覚や嗅覚も、いわゆる満腹中枢といったものも、敏感になってきます。

体の要求に合わない、ちゃんと吸収しないものばかり食べていたのでは育ちません。

 

皮膚感覚なんていうのは、触れられることで育っていきます。

充分になでられて、気持ちよく安心して、満たされてこそ育っていきます。

(満たされない子が、皮膚を通してサインを出すこともあります。)

 

抱っこやおんぶをされたり、一緒に楽しく遊んでもらったりすることで、運動神経も育ってきます。

 

もし「気」というものが親子の間にあるのなら、こういう関係のことを言うんじゃないかと思います。

大人同士だってそうでしょう。

決して、『すごい気を出す誰か」が手を当てることで、病気が一気に解決するという、一方通行的なものではありません。

 

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