肩関節や股関節などの動きも、胴体・背骨に連動しているのですが、実際には、その連動を無視して、股関節だけ、肩関節だけを柔らかくしていくということも、できなくはないんです。
それはかなり強引な方法なんですが、たとえば股関節の場合、開脚をさせて、他者が思い切り背中を押しいくのです。
以前、体操競技のスクールを取材したテレビ番組でそういうシーンを見たことがあります。
生徒(小学生)は痛みで泣き叫んでいるのですが、それでも構わず押していく。
終わってからも、しばらくは痛くてうずくまっているような状態なんですが、それでも毎日繰り返していくことで、股関節が180度開くようになっていくそうです。
こういった競技などの世界では、そういう無理矢理なやり方で関節を柔らかくしていくことも必要なのかもしれません。
体全体のバランスなど無視して、競技向けの体を作っていく、それもまぁその人が選んだ道なら仕方ないことでしょう。
ただそれと、「健康」というものとは別物だということは理解しておくべきなんじゃないかな、と思うんです。
テレビに出ていた体操教室ほどじゃないとしても、似たような感じで、関節を柔らかくしている人というのは、時々みかけます。
ヨガやバレエなどの経験者の方が多いです。
開脚のポーズなどをしてもらっても、胸がペタリと床についてしまう。
だけど、背中を触ってみると、腰がカチカチに固まっていたり、背骨に全然「しなり」がなかったりするんです。
股関節、肩関節という大きな動きをする関節が柔らかいと、とりあえずは色んなポーズが簡単にできてしまうものです。
だから一見すると体が柔らかく見えるのですが、実はその芯はカチカチに硬直している、なんていう例は珍しくありません。
そういう人に体操を教えると、持ち前の関節の柔軟さを活かして、一見するとうまく出来ているように余裕でやってのけたりするのです。
しかし、股関節や肩関節などを動かさないようにロックしてやってもらうと、途端にうまく出来なくなってしまう、ということがあります。
背骨の硬さがそこで露呈するわけです。
このようにうまく出来ない部分を見つけて行うのが、本当の体操の目的だと思うんですね。
自分で独学だけでやっていたのではその部分がみつからず、「うまく出来ているから、私の体は問題ない!」なんて思ってしまいます。
並の教室(?)でも、「あなたは体が柔らかくて素晴らしいですね!」と褒められて終わってしまいます。
ともかく股関節や肩関節「だけ」を柔らかくしていると、その柔らかさで他の固さを隠してしまうんですよね。
そしてその隠れている固さの中にこそ、その人が本当に改善しなければならない問題の核心が潜んでいるものです。
ところで、一切無理なトレーニングなどもせず、股関節だけが妙に柔らかい人もいます。
そういう人は、幼い頃から、股関節周辺の筋力がしっかり育っていない人に多いです。
弱さ故に柔らかいのです。