人間は二本脚で立っていて、そして重たい頭が一番上にあるせいで肩がこりやすいのだとか、猫背になりやすいのだという説を聞いた事があるかもしれません。
しかし、頭の重みのせいで肩がこるのなら、それは二本脚で立っている人間よりも、四つ足動物のほうが肩こりをおこすはずです。
多くの四つ足動物の頭は胴体の真上ではなく横についています。
そのほうが支えることは大変なはずです。
しかし、あの大きな頭を持っているカバやサイが毎日肩こりに悩まされている・・・なんていう話は聞いたことがありません。
キリンなんかはあんなに長い首を持っていて、肩や胴体には相当な重力がかかっているはずなんですが、それに似合わない細い脚と締まった体で支えています。
そして意外にも機敏な動きをすることができますよね。
つまりどんな動物も、それぞれの形体に応じて、ちゃんとその体のバランスを取っていられるような構造を持っているわけです。
人間だって同じです。
ただ、その構造が正しく維持されていないと、様々な不具合が起こってくるのです。
そうなると、本当は重みなど感じないはずの頭さえ、重たく感じてくるようになります。
だから、人間が二本脚であるとか、頭が一番上にあるといった構造そのものが原因なのではなく、正しい構造を維持できなくなった理由があって、それをさかのぼって探っていかなければならない、ということなのではないでしょうか?
実際には背骨はS字状のカーブを描いていますが、図の【A】のように、その中心軸の真上に頭が位置していれば、その重みを負担無くささえることができます。
ところが【B】のようにその位置がずれてしまうと、頭の重みが負担になってしまいます。
【B】のように位置がずれてしまう理由は実に多様です。
たとえば、腰の力が抜けてお尻が下がってしまっている人の場合だと、背骨を真っ直ぐに支えることができず、徐々に背中が丸くなっていき、やがて頭が前に出て行ってしまいます。
ちなみに赤ちゃんはそのような状態で、まだ腰に力がないのに頭ばかりが大きいせいで、寝たままで過ごしているのです。
腰にだんだん力がつくとともに立つようになっていきます。
だから早いうちに立って歩いてしまうと、背骨がわん曲してしまいます。
(実際、そのような例も多くあります。)
内蔵を悪くしても、その影響は背骨に出ます。
多くの場合、その内蔵と関連する背骨が後ろに飛び出すようになり、そこから背中が丸くなります。
そしてその結果、頭が前に出てきてしまいます。
さらに多いのは、頭の働かせ過ぎ、使い過ぎの場合です。
どんなに頭を使っても、頭そのものの質量は変わりませんが、かかる力が変わってくるのです。
神経を使い過ぎたり、心配しすぎ、気にし過ぎ…などが続くと、頭と首が強く緊張してきます。
特に心配し過ぎの人などは、首の前の筋肉が緊張します。その結果首が前に倒れてきてしまいます。
このような姿勢の崩れを正すために、意識して背筋を伸ばすということも少しは効果がありますが、本当はその原因をしっかりと見極めた上で、それに合った方法で正していかなければなりません。
また、普段の座り方が悪いからとか、脚を組むから姿勢が歪むとかいうことは、さほど多くはありません。
むしろ上記のような原因があって、そのせいで座り方が悪くなったり、脚を組まずにはいられなくなってしまう、ということのほうが多いようです。