心身の内なる集中力

身体のしくみ

「背骨が曲がっていて姿勢が悪いんです」「骨盤が開いているんです」といって、矯正を望んで来られる方が当塾にも時々いらっしゃいます。

でも大抵の場合、まずその「誤解」を解くことから始めることになります。

 

もし仮に、その背骨を真っ直ぐにしたところで、そして開いているという骨盤をギュッと引き締めたところで、その真っ直ぐな姿勢や引き締まった骨盤を保つ力がその人になければ意味がありません

そもそも、背骨が大きく曲がったり、骨盤が開いてしまったりというのも、その力がないから起こっていることなんです。

 

たとえば、妊娠中~産後には骨盤が普通の状態より開いています。それは然るべき時期がきて、閉じる力が戻って来てこそ、ようやく閉じていきます。

しかしその時期じゃないのにベルトなどで閉めてしまうと、引き締めようとする体自身の力がもう働かなくなってしまいます。

それでずっと腰の力は抜けたまま、なんていうことにもなるわけです。

 

だからこうしたことは、外から力を加えて整えればいいのではなくて、その人自身の力を使わないといけないのです。

 

それは、本人の体の内側(中心)から、体を中心に引き寄せよう、集めようとする力です。

身体の「集中力」と言うことができますし、身体の集中力がないと、精神的な面での集中力も無くなっていってしまいます。

集中力のない人というのは、腰が落ちて、姿勢にも表情にも覇気がありません。

 

とにかく、内側から引き寄せる力ですから、これを外から補うことは難しいわけです。

やたらめったら補えば補う程、逆に弱くなります。

だからどうしても、自分の体を動かして体操をするとか、日々の過ごし方、体の使い方を変える、といった行為が大事になってきます。

 

こうしたことは、「ゆるみ」とか「リラックス」についても同じことが言えます。

外側からアプローチしても、本物のリラックス、本当の芯からのゆるみはなかなか得られないものなんです。

一生懸命体を揉んでほぐしたところで、翌日にまたいつも通りの生活をすれば一気に戻ってしまいます。

そればかりか、揉めば揉む程、やがて効かなくなってきます。むしろ逆にその部分が固く、分厚くなってくることも多いのです。

 

体の表面への刺激にはそうした特徴があります。

そしてその刺激は、なかなか体の奥へは届かないものです。

 

ちなみに整体法の刺激というのは、それ自体で筋肉をゆるめようとするものではありません。

マッサージ的な刺激とは別物です。

刺激によってわざと一旦緊張させたり、鈍った神経を鼓舞させたりすることによって、体の奥の「反応」を引き出すための、「呼び水」的な刺激がほとんどです。

そのため、刺激の数を多くすればする程、効果がぼやけたり、相殺されたりしてしまいます。

時間が長ければいいとか、数多く刺激してもらえばいいというわけではありません。

当塾の個人指導に「時間別のコース」等が設けられていないのは、そのためです。

 

ともかく、体をゆるめるにも、その内側からゆるみを発生させる必要があります。

 

内側に引き寄せる力が「集中力」なら、ゆるみは「分散力」です。

平たく言えば「執着しない心」「手放せる余裕」といったところでしょうか。

私達人間の心身は『物』とはちがい、その引き締まりも、ゆるみも、本来は周りに左右されるものではなく、内側で起こるべきものです。

そうすると、その引き締まりによる力強さも、ゆるみによる余裕も、周りに左右されない、確固たるものになっていくのだと思います。

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