膝が悪くて治療院に行ったら、「膝は腰からくるんだ、本当は腰から治してていかないとダメなんだ」と言われた、という話はよくあります。
実際は膝だけではなくて、股関節の痛みとか、脚全体のしびれなどの症状にも言えることなんですが、この「腰からくる」というのは、半分ほど正解です。
では、なぜ残り半分が不正解かというと、腰が悪くなるのにも、さらに原因があるからです。
突き詰めていくとあまりに専門的な話になっていってしまうので、今回はできるだけ簡単にまとめてみたいと思います。
身体の様々な疲れは、最初は主に胴体の部分で発生します。
そしてその胴体の疲れが長期間にわたってたまっていく場所が腰です。
簡単に言うと、人間は立って生活していますから、上のほうで発生した疲れは下に沈んでいき、胴体の底である腰にたまることになるのです。
「底」である腰が悪くなっているということは、既にかなりの重症である、ということが言えます。
なので本当は「軽い腰痛」などというのはなくて、腰痛がある時点でかなり身体は疲れている、ということになります。
そのたまった疲れのせいで、腰は固くなり、動きが悪くなります。
弾力性も失ってしまいます。
元気なうちは、腰の弾力性によって上半身を支える両足への負担を軽減させていたのですが、それがなくなってしまうものですから、膝や股関節に体の重みによる衝撃がダイレクトに加わることになります。
さらに、腰には、体を左右に捻るという大きな役割があります。
後ろを振り向くような動作のときはもちろん、歩いたり、腕を動かしたりという、あらゆる身体の動作の中には捻りの要素が含まれているのです。
ところが腰が固くなって、その捻りの動きが鈍くなってしまうと、代わりに膝や股関節を捻らなければならなくなります。
股関節はまだ少し捻れるのですが、膝は前後方向にしか動かないような構造になっています。
そこに捻りの方向に圧がかかってくるわけですから、やがて壊れてしまいます。
膝の痛みのかなり多くのものが、膝の内側または外側に発生するのも、その捻りの刺激のせいです。
股関節も、少しは捻れるものの、普段以上に捻れてしまうとやはり壊れてしまいます。
逆に考えると、「少しは捻れる」せいで、無理をしてしまう場所とも言えます。
膝はすぐに悲鳴をあげてくれますが、股関節はごまかしが少し効く分、壊れている事になかなか気づきにくく、気づいた頃にはかなりの重症だった、なんていうこともあります。
膝や股関節が悪くなっている人は、体が左右に大きく傾いています。
それをみて、「体が傾いているから膝が悪くなるんだ」と言う人もいるようですが、それはほとんどの場合逆です。
傾き自体は以前からあったものかもしれませんが、そのような傾きが起こるような疲れがあって、それが腰にたまって、さらに膝や股関節に及んだ、ということのほうが多いでしょう。
ちなみに、腰にたまった疲れも、ほとんどの場合左右差があります。
どちらかの腰が疲れて下がり、それが股関節や膝に余計な圧を加えています。
最終的に、骨盤のすぐ上の腰の一点にその疲れは集中し、それが「仙腸関節」という骨盤の部分に歪みを発生させます。
そこから股関節や膝に波及するのですが、その場合は骨盤にも大きな歪みが発生しています。
こうして見ると、「骨盤の歪みが膝の痛みの原因」という見解も半分以上間違っていて、その原因はさらに上にある、ということになります。
当塾では、膝が悪いという人でも、膝にはあまりさわらず、胴体(背中や腹部)、そしてさらにその上にある頭部を中心にみていきます。
それにはこのような理由があるからです。