人間の体は、多くの建物に比べるととても不安定な形をしています。
脚が二本しかない時点で既に不安定です。
そのため、常に体にある程度の力を入れて支えていないと起きていられません。
眠ったまま、あるいは気を失ったまま立っていることはできません。
しかも、重たい頭が一番上に乗っているのですから、体は常に、バランスを取って立っていることにある程度の労力を使い続けることになります。
つまり簡単に言うと、常にスイッチを「ON」にしておかないと体を起こしていられないということですね。
椅子に座って背もたれにもたれていたとしても、起きている限りはONでなければ首から上を支えていられません。
眠りに落ちるということは、この首の力が「OFF」になるということです。
だから電車の中で寝ている人は、頭をガクッと下にぶら下げているか、後ろの窓や壁に頭をもたれかけさせています。
ともかく背骨の中でも、首は特に頭を支えるための多くの役割を担っています。
だから首が痛いという症状の原因は、実は頭の影響によるものであることがかなり多いのです。
とは言っても、自分の頭を支えるくらいの性能は、ちゃんと体に備わっています。
問題は、その性能を越えるくらいに、想定外に頭が重くなってしまった場合です。
ここで言う「重さ」というのは、「質量」のことではありません。
頭の質量が変わるということはあり得ません。
しかし、頭に「かかる力」が変わるということはあります。
「今日は何だか頭が重い」「仕事のことを考えると頭が重くなる」などということがあるように、体感としての頭の重さの変化というのはよくあることなのです。
実際に「頭が重い」などという心理状態の時には、知らないうちに歯を食いしばっていたり、眉間にシワを寄せていたりします。
そうすると、頭部にはやはり力がかかるのです。
特に歯を食いしばる力は50kg以上の重さに相当するとも言われていますから、簡単に言うと、軽めの大人一人が頭の上に乗っているような状態にもなるわけです。
そうすると、当然首にはその重くなった頭を支えるために、普段以上の力が必要となってきます。
さらに頭が重くなってくると、今度は首だけではなく、首の下の背中も順番に緊張・硬直してくることになります。
しかも、食いしばりの力は左右均等ではありませんから、首や背中も右か左かのどちらかに偏ることになります。
または、片方に偏れば、今度はバランスを取るために反対側がまた緊張し出す...という負の連鎖を引き起こすことにもなります。
実は「体の歪み」というものは、このようにして作られていくこともあります。
図のように、最初はだんだん頭が重くなっていくに従って、最初はそのテンションがA点にかかり、それがさらに酷くなるとB点に波及し、さらに今度はバランスを取るためにC点が出現する・・・というような具合です。
この状態がさらに進んでいけば、背骨だけではなく骨盤、股関節、膝、足先や足の裏にまで影響が及んでいきます。
腕や内臓諸器官にも影響します。
ともかく、本来は自らの頭を支える力は背骨にも備わっているのですが、様々な事情で頭を使い過ぎ、そして重くなってくると、このような不具合が生じてくる、というメカニズムになっています。
福井自然体健康塾では、ほぼ全員に頭の操法を行います。その理由は、こういったところにあるのです。
頭を軽くするだけで、全身がスッキリ軽くなるという人は多いですし、腰の歪みが見た目でわかるほどに解消する、なんていう例も多いです。