当塾には、産後に体調を崩したという人が訪ねて来られることが度々あります。
産後まだ数週間しか経っていないという人の場合もあれば、もう数年経っているけれど、出産を機にどんどん悪くなった、という場合もあります。
中でも、股関節、背中、腕〜肩が痛くなる、という人はとても多いのですが、その原因のほとんどは腰〜骨盤です。
ご存知の通り、出産時は大きく骨盤が開くのですが、それが完全にもとに戻るまでは、腰の力が抜けた状態になっています。
というか、骨盤の引き締まりは、腰の回復と同時進行で起こっていくのです。
最初数日は完全に抜けたような状態ですので、ほとんど立って歩かないのが理想ですが、現代のお産の事情ではそれは不可能に近いでしょう。
その後も数週間は、まだ本格的には力が戻りません。
なので極力無理を避けた方がいいんですが、腰の力が抜けたこの時期に、やたらと立って歩いたり、重い物を持ったりしていると、腰以外のところで無理に体を支えることになってしまいます。
そのため、股関節が痛んだり、背中が傷んだり、肩や腕が痛んだりするわけです。
だんだん脚(太もも)ばかりが太くなる人も多いのですが、それも同じ理由です。
さらに、母乳の分泌と授乳の影響で、その時期は肩甲骨周辺の背中が固くなっているので、余計に背中が痛くなりやすいのです。
だから、特に初期のうちは寝たままあげたり、膝の上に置いたクッションの上に赤ちゃんを乗せてあげるなどしたほうがいいでしょう。
困ったことに、産後まもない時期に余計な負担をかけてしまうと、後々までその影響が続いてしまいます。
時間が経てば自然に楽になる、そのうち腰の力も戻ってくる、というわけにはいかないのです。
腰以外で体を支える癖がついてしまうと、腰が抜けた状態がいつまでも続いてしまいます。
下手をすると、産後数年経ってもそのままです。
だから子どもが大きくなればなるほど、抱っこがつらくなってきます。
最初はあまり感じなかったけれど、子どもが1歳、2歳になってから腕が痛くなってきた・・・なんていう人もいます。
ご本人としては、大きな子どもを抱えるから腕が痛いんだ・・・と、原因は「今」にあると感じているのですが、実際には数年前の産後の過ごし方に原因があったのです。
過去をさかのぼることは出来ませんが、そういう人は改めて腰に重心を戻していくよう、様々な体操を組み合わせて行っていくといった、時間をかけての修正が必要になります。
ベルトとか矯正術とかでギュッと骨盤を締めればOK!・・・なんていう訳にはいかないのが現実です。
また、産後の体操にもいろいろなものがありますが、産後すぐにいきなりグイグイ体を引き締めるエクササイズなどは大変危険で、逆効果です。
きちんと体の状態と照らし合わせながら組み立てていかなければなりません。
体を直接見る技術のある人じゃないと難しいでしょう。
そういえば以前、某有名女性スケーターが産後すぐに試合に復帰していて話題になりましたね。
彼女のチャレンジ精神には頭が下がる思いもありますが、だけどやはり、体的には相当無理がかかっていたようです。
その後一線を退いたようですが、その無理の影響はこれからさらに出てくることでしょう。
先日テレビで見かけましたが、かなりボロボロの体をしているように見えました。
ただ、現時点で本人にその自覚があるかどうかは分かりません。
特に彼女の場合、少々体が壊れたって、平気でごまかせるような鍛え方をしていたからです。
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